其の三 宗箇松の復元
一 四代目宗箇松を植えよう
平成10年になって、地元の人々を中心に、「由緒ある宗箇松を通じて、市民に郷土の歴史や文化について理解を深めてもらうために、宗箇山に頂に宗箇松を蘇らせよう。」という話が持ち上がりました。主な経緯
三代目宗箇松は「マツクイムシ」によって枯れてしまいましたが、広島県では拡大するマツクイムシ被害に対処するため、害虫に強い松の研究を進めていました。その結果、害虫に抵抗力を持つ松として品種改良した抵抗性松の生育に成功しました。これが、「広島スーパー松」です。
四代目宗箇松は、通常の松でなく、広島県林業技術センターで品種改良されたこの松の苗木を植樹することにしました。
あわせて、四代目宗箇松を植樹する場所のそばには、江戸時代、広島の景勝の一つであった初代宗箇松の秀景を偲ぶことができるよう、土佐光芳の筆になる「広島松之図」をあしらい、また、その由来を記した説明版を設置することとしました。
二 宗箇松復元事業実行委員会
宗箇松の復元という意義深い事業を実施するために、これまで宗箇松に係わりのあった地元の関係団体、登山・ハイキングの愛好者の団体、ライオンズクラブ、造園建設事業者の団体、茶道上田宗箇流の関係者、その他の協力者、広島市関係職員などで構成する「“宗箇松”復元事業実行委員会」が設置されました。
この事業は、広島を愛し、その歴史、文化に関心を寄せる市民の発意によって、関係者の協力により進めるという「市民が主役のまちづくり事業」として進めていくことになりました。従って、実行委員会の行う事業は、一つには苗木を植樹する際の役務の提供(苗木の運搬、植樹などの作業)を行うこと、もう一つは説明版の製作費に充てる財源を確保することで、植樹のための事前準備、松の搬送、植樹祭の準備などはすべてボランティアで進めることになりました。
そして、いよいよ平成10年11月29日を四代目宗箇松植樹の日とすることに決定しました。
宗箇松復元事業実行委員会委員名簿
◎ 学識経験者
頼 祺一(広島大学教授)
◎ 上田宗箇流関係者
上田 宗嗣(茶道上田宗箇流家元)
原田 睦民(財団法人上田流和風堂理事)
◎ 広島城北ライオンズクラブ(会長 吉村美佐男)
◎ 広島県山岳連盟(会長 種村 重明)
◎ 社団法人広島市造園建設業協会(会長 土井 洋二)
◎ 行政関係者
広島市経済局長
広島市都市計画局長
広島市教育長
◎ 地元関係団体《発起人》
(長束地区)
長束地区社会福祉協議会(会長 松陰 静心)
長束学区体育協会(会長 森 隆司)
長束西学区社会福祉協議会(会長 川本 泉)
長束西学区体育協会(佐々木元紀)
原南学区体育協会(会長 永井 則雄)
(三篠地区)
三篠地区社会福祉協議会(会長 西田 早苗)
平成10年6月〜7月 発起人による協議(事業趣旨等について)
7月30日 松の苗木の寄贈について広島県林業技術センターへ協力依頼
8月7日 第1回発起人会議(事業計画等の協議)
8月24日 第1回実行委員会(委員会発足、趣旨説明)
9月3日 第1回発起人その他関係者による推進会議
10月16日 第2回発起人その他関係者による推進会議
11月7日 枯死していた三代目宗箇松の伐採
11月9日 第2回実行委員会(事業計画の決定)
広島城北ライオンズクラブから実行委員会へ説明版の贈呈
広島市造園建設業協会から実行委員会へ四つ目垣一式の贈呈
11月22日 宗箇山山頂で穴掘り、枯れ木・灌木の伐採等の事前準備
11月27日 松の苗木を三次から広島へ搬送 三次から搬送される松の苗木
11月29日 宗箇山山頂で松の植樹、説明版の除幕等
三 宗箇松の植樹![]()
平成10年11月29日日曜日。天気は晴れ。午前8時30分から、
広島市安佐南区の長束第二公園で四代目宗箇松の「出発式」が行われ
ました。
関係団体や地元の皆さんなど約200人が集まり、平岡広島市長の挨
拶に続いて、地元長束小学校と長束西小学校の児童がアトラクショ
ンを披露しました。
そして、午前9時、松の苗木が宗箇山の頂上を目指して出発しました。
頂上へ向かう苗木、重さ20s
一方、宗箇山のもう一方の登山口である広島市西区の三滝寺では、宗箇松植樹の際に行われる献茶と苗木の灌水用に「名水・三滝の水」の取水が行われ、こちらからも頂上を目指して「水の登山隊」が出発しました。
午前9時45分、宗箇松の苗木が山頂に到着。10時から四代目宗箇松の「植樹祭」が行われました。まず、関係者による植樹があり、続いて上田宗箇流家元による献茶、最後に宗箇松由来説明版の「除幕式」が行われて、悲願であった四代目宗箇松の植樹が無事終わりました。
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献茶式